脳の病気と治療

脳の病気と治療

脳の病気について

脳神経外科手術治療

ここでは我々が通常行っている手術治療について簡単に説明し、実際の手術での手術用顕微鏡からの画像を見ていただきます。脳組織や血管構造などなじみの薄いものもあると思いますが、一般の方にも病気のことを深く理解していただき、治療のこともよく知っていただくことが重要と考えて、ここに掲載いたします。

<未破裂脳動脈瘤に対するクリッピング>

まず脳に到達するため全身麻酔を行い開頭を行います。通常の開頭はこめかみの辺りに 行うことが多く、創が目立たないよう毛髪に隠れる部分で皮膚を切開します。頭蓋骨を露出した後に骨切開を行い、脳表面を露出します(写真1)。

1. 脳表面から深部へのアプローチ 〜
脳組織の表面部分(黄色矢印)と、脳の表面を走る血管(この図では静脈:緑矢印)と脳組織の間に存在する隙間を分けているところです。 動脈瘤は脳表面から少し深いところに存在しているため、脳組織やできるだけ血管を傷つけないように手術用顕微鏡を用いて深部へと進みます。

2. 動脈瘤の露出操作
脳自体を保護した状態で血管分岐部に存在する動脈瘤(黄色矢印)を露出させたところです。壁の厚いところ(白く見える部分)と壁の薄い部分(赤く見える部分)がみられます。この動脈瘤は約4-5mmの大きさですが、治療の目的は 動脈瘤だけを閉塞させて、動脈瘤破裂によるくも膜下出血を防止することで、この後正常血管(青色矢印)を閉塞させないように動脈瘤をクリッピングしていきます。

3. クリッピング完了後
クリッピングが完了したところ。チタニウム製の動脈瘤クリップ(青矢印)により動脈瘤本体がつぶされていて(黄色矢印)、これでクリッピング完了です。 緑矢印で正常血管構造を示しており、クリッピング操作により閉塞を来たしていないことがわかります。

 

 

<未破裂脳動脈瘤治療の説明>

〜 治療方針に関する説明 〜

「未破裂脳動脈瘤の自然経過」
未破裂脳動脈瘤は約5%の人に存在するといわれていますが、特殊な例を除いて未破裂脳動脈瘤があるからといっても症状を呈することなく、放置しておいても何ら問題ありません。しかし、脳動脈瘤は一旦破裂するとくも膜下出血を発症し、強い 頭痛と嘔吐が出現し意識障害をきたすこともあり、一般に約半数が死亡するといわれます。当院の治療統計でも全体の約40%が死亡し、約20%の人が後遺症を残しました。 未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は年間1%程度といわれ、計算上10年間で約 10%と考えられます。しかし、それぞれの動脈瘤の大きさや形によって破裂の確率 は変わり大きなものや不整形のものでは破裂しやすい事がわかっています。

「治療をせず、経過観察する場合」
くも膜下出血の発症についての誘因は不明ですが、高血圧・喫煙・飲酒・ストレス などが関係するといわれ、日常生活において過度のストレスや血圧上昇を避けるように注意します。その上で、もし突然の頭痛や嘔吐があればすぐに脳神経外科を受診して下さい。また、半年を目安として定期的に脳神経外科受診と検査を行い、脳動脈瘤が大きくなっていたり変形したりする場合は治療を検討すべきと考えます。

「未破裂脳動脈瘤の治療方法」
未破裂脳動脈瘤の破裂を防止する治療法としては、開頭によるクリッピングと血管内 手術によるコイル塞栓術の2つの方法があります。それぞれの方法には長所・短所があり、患者さんの状態や動脈瘤の部位・大きさなどによりどちらの方法が良いと判断します。

〜 治療方法についての説明 〜

「手術方法」
・手術室で全身麻酔下に行います。
・髪の毛は皮膚切開部周辺のみ剃毛し、皮膚切開は頭髪内で行いますので、髪の毛が伸びれば外見上はわからなくなります。
・手術に際し、頭蓋骨の一部を一時的に除去しますが、終了時には元通り整復固定します。
・クリッピングとは、手術顕微鏡を使用して脳の隙間から動脈瘤部に到達し、動脈瘤の頸部を金属製クリップで遮断する手術です。しかし、動脈瘤の形態によってはクリッピングは断念しコーティング(動脈瘤被包術)を行うこともあります。

「手術の問題点」
一般に、約1%で命にかかわる合併症、約3%で意識障害・四肢麻痺・言語障害などの後遺症が残る可能性があります。これらは、脳動脈瘤の部位や大きさによって異なるため実際には個々の動脈瘤によりその可能性は変わります。
以下、主な手術合併症を併記します。
1)全身麻酔に伴う合併症…心筋梗塞、肺炎、ストレス潰瘍、
肝腎障害など
2)開頭術に伴う合併症…術後頭蓋内出血、術後髄膜炎など
3)クリッピングに伴う合併症…術中破裂、親動脈損傷による脳梗塞など

「術後経過」
・合併症が起こらない限り翌日には食事やトイレ歩行が可能になります。
・術創部は終日感痛みと腫脹が残りますが、徐々に軽減し約1週間で抜糸(抜鈎)します。
・術後検査(脳血管撮影・3D-CTA)を行い、約2週間で退院を予定します。

 

 
<破裂脳動破裂によるくも膜下出血に対するクリッピング>

1. 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の術野
動脈瘤が破裂したくも膜下出血の治療を行っているところです。動脈瘤は脳血管(緑矢印)のつけねに存在していますが、未破裂脳動脈瘤の手術と比べて、動脈瘤(黄色矢印)が破れているため周辺のくも膜下腔に出血して全体的に赤みのある術野になっています。

2.クリッピング完了後
動脈瘤(黄色矢印)をチタンクリップ(青色矢印)で処理したところです。この動脈瘤は複雑な形状をしていたため複数のクリップを使用しました。このようにしておけば動脈瘤が再び破れて出血する心配はなく、この後くも膜下出血をできるだけ洗浄除去します。

 

 

<破裂脳動脈瘤クリッピングの説明>

〜 治療方法に関する説明 〜

破裂脳動脈瘤の再破裂を防止する治療法としては、開頭によるクリッピングと血管内手術によるコイル塞栓術の2つの方法があります。それぞれの方法に長所・短所があり、患者さんの状態や脳動脈瘤の部位・大きさなどによりどちらの方法が良いか判断します。当院では、原則として開頭によるクリッピングを行い、再破裂の防止とくも膜下出血の可及的洗浄による脳血管攣縮対策により、良好な成績を残しております。<br />
〜 開頭クリッピングの説明 〜

「手術方法」
・手術室で全身麻酔下に行います。
・髪の毛は皮膚切開周辺部のみ剃毛します。
・手術に際し、頭蓋骨の一部を一時的に除去しますが、終了時には元通り整復固定します。
・クリッピングとは、手術顕微鏡を使用して脳の隙間から動脈瘤部に到達し、動脈瘤の頸部を金属製クリップで遮断する手術です。
・クリップにより動脈瘤の再破裂を防止すると同時に、脳血管攣縮対策としてくも膜下出血の可及的洗浄を行います。
・また、動脈瘤の形態によってはクリッピングを断念しコーティング(動脈瘤被包術)を行うこともあります。

「手術の危険性と合併症」
・手術の危険性は、重症度・年齢・脳動脈瘤の部位や大きさなどが関係しますが、とくに重症度を意識障害の程度から軽症・中等度・重症に分類した当院のデータでは、社会復帰率は90%、60%、20%、死亡率は4%、14%、42%で
あり、術前重症度が最も手術の危険性と関係が大きいことがわかります。【くも膜下出血のパンフレット参照】
・以下、主な手術合併症を併記します。
1)全身麻酔に伴う合併症…心筋梗塞、肺炎、ストレス潰瘍、肝・腎障害など
2)開頭術に伴う合併症…術後頭蓋内出血、術後髄膜炎など
3)クリッピングに伴う合併症…術中破裂、親動脈損傷による脳梗塞など

「クリッピング後に特有の術後治療」
・術後2週間は脳血管攣縮治療としての薬物療法と合併症治療を中心に行います。
・術後3週以後に水頭症検査と治療、後遺症状に対するリハビリテーションを開始し、全身状態が落ち着いてから術後検査(脳血管撮影または3D-CTA)を予定します。

 

 
<頚部頚動脈狭窄に対する内頚動脈内膜剥離>

1. 頚部頚動脈切開
頚部頚動脈を切開したところで、頚部の動脈(脳に血液を送っている)は、比較的動脈硬化の強い部位であり、頚動脈(緑矢印)の内部に大量の粥腫(プラーク)が見られます(黄色囲み)。手術では顕微鏡下に粥腫を摘出していきますが、摘出中は脳への血流を保つためにバイパスを用います(青矢印)。

2. 粥腫摘出完了後
先ほどの粥腫がほとんど全て摘出されており、きれいな血管内面が見えています。この後、切開した血管を元通り縫合しバイパスを抜いて手術完了です。この病気はかなり進行するまで全くの無症状ですが、自分の知らない間にこのようなゴミが血管の中に育っている可能性があるということを認識しておいていただきたいのです。

 

 

<三叉神経痛に対する神経血管減圧>

頚部頚動脈切開 三叉神経(黄色矢印)を圧迫していた上小脳動脈の走行を変化させ(緑矢印)圧迫を取り除いたところです。手術は耳の後ろの後頭骨を直径3cm位開頭し、手術顕微鏡を用いて小脳と骨の隙間から三叉神経を圧迫している動脈を見つけ出していきます。なお、顔面麻痺についても同様に、顔面神経を圧迫している血管を減圧することで 治療を行います。

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頚部頚動脈切開

 

村田病院の目標は「脳卒中の総合診療」であり「患者さまが満足していただける良質で安全な医療」です。